金属加工のワンポイント講座

金属加工のワンポイント講座

onepoint

  1. HOME
  2. 金属加工のワンポイント講座
  3. ステンレス(SUS)の加工硬化が起きる原因

ステンレス(SUS)の加工硬化が起きる原因

加工硬化とは、金属に力を加えることにより、硬さが増す現象のことです。SUSを加工する時のトラブルの原因に多いのが、加工硬化です。SUSの種類によっても加工硬化の有無・程度が変わります。
この記事ではステンレス(SUS)の加工硬化が起こる種類と加工硬化の原因を解説しています。

加工硬化を起こすSUSの種類

SUSには多数の種類があり、種類によって物性が異なります。
その中でも加工硬化を起こす種類とそうでない種類とに分かれます。
加工硬化を起こすのは、オーステナイト系のSUSです。
金属の加工硬化の中でも、オーステナイト系SUSの加工硬化は極端に硬くなります。
その硬さが加工時にトラブルの原因になることがあります。

種類代表例加工硬化
フェライト系SUS430起こらない
マルテンサイト系SUS410起こらない
オーステナイト系SUS304,SUS316起こる
オーステナイト・フェライト系SUS329J1起こる

※析出硬化系ステンレス SUS600番台の場合、オーステナイト系は加工硬化しますが、マルテンサイト系の材質は加工硬化しません。

加工硬化が起こる原因

オーステナイト系SUSの加工硬化が極端に硬くなる理由は結晶構造にあります。
この金属の結晶構造は面心立方格子です。
常温でこの状態となっているのは特異で、本来であれば高温状態でしか存在しません。
オーステナイト系SUSは、クロム(Cr)とニッケル(Ni)を入れて高温状態から急冷して製造します。
この過程が本来ないはずの常温で面心立方格子の結晶構造状態をつくりだしています。
そしてこの面心立方格子は、結晶が動きにくい性質を持っています。
加工時に表面の面心立方結晶に高熱が与えられることで結晶構造がひずみ、これがマルテンサイト結晶へ変化し、硬化が起こります。

この時、加工で生じたマルテンサイト化した部分を加工誘起マルテンサイトと言います。
オーステナイトのもつ非磁性から変化し、磁性を持った状態になります。

加工時の注意点

加工硬化に加えて、含んでいるニッケル(Ni)によってねばさが生じるため、溶着が起きやすい性質も持っています。
さらに他のオーステナイト系のSUSは、他の種類のSUSと比べて切削抵抗が大きいため、切り屑のせん断には力が必要です。

加えて熱伝導率が低い特徴があり、加工で発生する熱が刃物に集まりやすくなるため、刃物の寿命が短くなります。

表面から0.1mm~0.2mm程度は、加工硬化を起こしています。
この層よりも深い切込み量で削り、硬化した表面をこするような加工にならないようにすることで対策ができます。

特にオーステナイト系のSUSを加工する際には最適な刃物や加工条件を選ぶだけでなく、しっかりと刃物が当たる箇所を冷やせるように、クーラントの出る位置を変えるなどの調整が必要です。

Point

・オーステナイト系のSUS(300番台)は加工硬化を起こします。
・加工硬化の原因は本来はない常温での面心立方格子の結晶構造にあります。
・加工時の熱により、加工部分が非磁性から磁性を持つ性質に変わります。
・加工時には加工硬化を起こした表面よりも深い部分を削り、できるだけ固くなった部分をこすらないように調整する。

ステンレス(SUS)の金属加工のご相談・ご依頼承ります。

メタルスピードでは、ステンレス(SUS)加工などの難削材の切削加工も承っております。
お問い合わせには2時間以内に回答いたします。急ぎの加工、ご相談はお任せください。

ご相談
お見積もり

このサイトはアルミ加工ステンレス加工金属切削加工の情報をまとめています。金属部品の切削加工を中心に、設計や加工のご相談も承っています。不明点などある場合はお気軽にお問い合わせください。

タグ

関連記事


関連コンテンツ

お見積り・お問い合わせ

無料お見積り2時間以内に返答対応
メールでのご連絡は
info@metal-speed.com まで

お問い合わせはこちら
お問い合わせ
2時間以内に回答 無料見積もり相談 大学・研究機関の方 提供できる価値 Added Value 提供できる価値