SUS304とSUS430の違い
SUS304とSUS430は共にステンレス鋼の切削加工において代表的な金属です。共に加工性に優れたステンレス鋼ですが、添加された金属の違いから耐食性などの性質に違いがあります。この記事ではSUS304とSUS430の違いを解説します。
金属加工のワンポイント講座
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加工硬化とは、金属に力を加えることにより、硬さが増す現象のことです。SUSを加工する時のトラブルの原因に多いのが、加工硬化です。SUSの種類によっても加工硬化の有無・程度が変わります。
この記事ではステンレス(SUS)の加工硬化が起こる種類と加工硬化の原因を解説しています。
SUSには多数の種類があり、種類によって物性が異なります。
その中でも加工硬化を起こす種類とそうでない種類とに分かれます。
加工硬化を起こすのは、オーステナイト系のSUSです。
金属の加工硬化の中でも、オーステナイト系SUSの加工硬化は極端に硬くなります。
その硬さが加工時にトラブルの原因になることがあります。
種類 | 代表例 | 加工硬化 |
---|---|---|
フェライト系 | SUS430 | 起こらない |
マルテンサイト系 | SUS410 | 起こらない |
オーステナイト系 | SUS304,SUS316 | 起こる |
オーステナイト・フェライト系 | SUS329J1 | 起こる |
※析出硬化系ステンレス SUS600番台の場合、オーステナイト系は加工硬化しますが、マルテンサイト系の材質は加工硬化しません。
オーステナイト系SUSの加工硬化が極端に硬くなる理由は結晶構造にあります。
この金属の結晶構造は面心立方格子です。
常温でこの状態となっているのは特異で、本来であれば高温状態でしか存在しません。
オーステナイト系SUSは、クロム(Cr)とニッケル(Ni)を入れて高温状態から急冷して製造します。
この過程が本来ないはずの常温で面心立方格子の結晶構造状態をつくりだしています。
そしてこの面心立方格子は、結晶が動きにくい性質を持っています。
加工時に表面の面心立方結晶に高熱が与えられることで結晶構造がひずみ、これがマルテンサイト結晶へ変化し、硬化が起こります。
この時、加工で生じたマルテンサイト化した部分を加工誘起マルテンサイトと言います。
オーステナイトのもつ非磁性から変化し、磁性を持った状態になります。
加工硬化に加えて、含んでいるニッケル(Ni)によってねばさが生じるため、溶着が起きやすい性質も持っています。
さらに他のオーステナイト系のSUSは、他の種類のSUSと比べて切削抵抗が大きいため、切り屑のせん断には力が必要です。
加えて熱伝導率が低い特徴があり、加工で発生する熱が刃物に集まりやすくなるため、刃物の寿命が短くなります。
表面から0.1mm~0.2mm程度は、加工硬化を起こしています。
この層よりも深い切込み量で削り、硬化した表面をこするような加工にならないようにすることで対策ができます。
特にオーステナイト系のSUSを加工する際には最適な刃物や加工条件を選ぶだけでなく、しっかりと刃物が当たる箇所を冷やせるように、クーラントの出る位置を変えるなどの調整が必要です。
Point
・オーステナイト系のSUS(300番台)は加工硬化を起こします。
・加工硬化の原因は本来はない常温での面心立方格子の結晶構造にあります。
・加工時の熱により、加工部分が非磁性から磁性を持つ性質に変わります。
・加工時には加工硬化を起こした表面よりも深い部分を削り、できるだけ固くなった部分をこすらないように調整する。
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