普通鋼と特殊鋼 特徴と用途の違い
鋼材は大別すると普通鋼と特殊鋼に分類されます。それぞれ特徴と用途が異なり、種類も豊富です。両者の違いを理解することは部品の素材選定をする上でも重要です。この記事では、普通鋼と特殊鋼の違いについて詳しく解説します。
金属加工のワンポイント講座
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特殊鋼は鉄にニッケルやモリブデンなどの金属元素を加えて、特定の用途に適した製品を製作するために調整した合金です。切削加工での加工に適したものも多く、種類も多岐にわたります。添加する金属元素の種類や量により、強度・耐食性・靭性・耐熱性・加工性などの物性が変化します。これらは汎用的な鋼材である普通鋼に対して、特殊鋼と呼ばれます。
一般的な鋼材で強度や耐熱性に不安がある箇所には、用途に合わせた特性の鋼材を用意することで、製品の性能・安全性を向上させることができます。特殊鋼は主に下記の調整を目的に金属元素が添加されています。
ニッケル(Ni) | 粘りと強さが向上。熱にも強くなります。 |
クロム(Cr) | 耐食性と摩耗性が向上します。 |
モリブデン(Mo) | 粘り強さが増し、高温下での強度が向上します。 |
銅(Cu) | 耐食性が向上します。 |
コバルト(Co) | 高温下での強度が向上します。 |
チタン(Ti) | 粘り強さが向上。耐食性が向上し、錆びにくくなる性質も持ちます。 |
マンガン(Mn) | 強度が向上します。 |
タングステン(W) | 高温下での強度と耐摩耗性向上の効果があります。 |
バナジウム(V) | 強度と耐摩耗性が向上します。 |
特殊鋼は主に構造用鋼、工具鋼、その他特殊用途鋼の3つに大別されます。その他特殊用途鋼はさらにステンレス鋼、耐熱鋼、超合金、バネ鋼、軸受鋼、快削鋼に分類されます。
構造用鋼(SCM等) | 鋼材の種類が多く、多くの業界で利用されています。構造材として調整されており、主に要求強度の高い箇所に使用されます。 |
工具鋼(SK,SKD等) | 工具鋼はさらに炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼に分類されます。強く硬く、耐摩耗性に優れ、金型や切削工具に利用されます。 |
ステンレス鋼(SUS) | 錆びにくい性質を持つクロム(Cr)を11%以上含有する鋼材です。表面が不動態皮膜に覆われおり、耐食性に優れた金属です。 |
耐熱鋼(SUH等) | 高温環境下での耐腐食性、強度、耐酸化性に優れた特殊鋼です。ステンレス鋼も高温環境に強いことから、耐熱鋼として分類されることもあります。 |
超合金 | 超高温環境下でも耐酸化性と耐腐食性、強度を維持する特殊鋼です。 |
バネ鋼(SUP) | バネ部品用に調整された特殊鋼です。シリコン(ケイ素)を含有することで、衝撃や疲労に強い材質に改良されています。 |
軸受鋼(SUJ) | 高炭素クロム鋼とも呼ばれ、耐摩耗性が要求される摺動部の部品やボールベアリング使われます。熱処理が多段階必要なため、製造に時間がかかります。 |
快削鋼(SUM等) | 普通の鋼材よりも削りやすくするために硫黄を添加した金属です。精度を求められる部品の加工に重宝されます。 |
鋼材の特性を目的に合わせて引き出すために熱処理を行います。主に硬度の向上が目的で、鋼材によって引き出される硬度は様々です。焼入れ、焼戻し、焼きなまし、焼ならしといった処理があります。
850~950℃に加熱した後、水や油で急冷して行います。この処理を行うと鋼材は硬くなり、強度が増します。しかし、このままの状態では脆いので、焼戻しの処理が必要です。焼き入れにはズブ焼き、真空焼入れ、浸炭焼入れ、高周波焼入れなどの処理方法があります。
焼入れした後にそれぞれの特殊鋼に適当な温度に再加熱して、冷却を行います。脆い状態の不安定な組織を安定させ、靭性を与えることができます。
700~900℃に加熱して、ゆっくり冷却します。内部の歪みを除去することができます。
850~950℃程度に加熱して、空冷にて冷却することで鋼の組織を均一微細化します。
表面を硬化させる処理です。耐摩耗性、耐熱性、耐腐食性が向上します。鋼の表面に窒素を含ませて、窒化層を硬くすることができます。焼入れでは歪みが発生しますが、窒化では変形が少なく、精密部品の処理として行われます。
特殊鋼は特定の用途に適合するように調整された鋼材であるため、一般鋼と比較すると快削鋼を除き、クセが強く、切削加工の難易度が高いものが多いです。特殊鋼の材質の種類は多岐に渡るため、加工にはそれぞれの特徴に合った切削刃物を選定する必要があります。また、加工条件の調整も必要で、送りスピードが速過ぎたり遅過ぎたりして回転数が不適切だと加工品の仕上がりに悪影響を及ぼします。
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